2004年2月号 ドクターズアテンションにて医誠会病院が紹介されました

医療の最前線

免疫療法を中心に
患者さん本位の、「集学的治療」と「オーダーメイド治療」


武田力さん<医誠会病院副院長、免疫化学療法センター所長>に聞く

医誠会の「免疫化学療法センター」は免疫治療を中心に、あらゆるがんに対する治療を行って、最先端治療の「がんセンター」の役割を果たしています。所長、医誠会病院副院長で、免疫療法の日本におけるパイオニアである、武田力先生にうかがいました。

人体が本来持っているがん免疫力を高めてがんを治療


副作用が少ない

―免疫療法とはどういう治療法ですか。

武田 がんに対する一般的な治療法は、「手術」「化学療法」「放射線療法」などですが、これらの治療は、がんをやっつけると同時に、からだの正常な臓器や細胞も同時にやっつけるので、その副作用や後遺症に苦しむ方もおられます。「免疫療法」は、人体が本来持っているがんをやっつける免疫力を高めてがんを治療する方法で、副作用が少ないのが特徴です。



―免疫療法にも種類があるとのことですが。

武田 一つは、「活性化リンパ球療法」です。がんの手術などで体力が落ちていると免疫力は上がってきません。そこで患者さん自身のリンパ球を取って、体外で培養してあげて、患者さんに戻してあげようという方法です。患者さんのリンパ球ですから拒否反応を起こす心配もありません。血液を約20ml採血し、その中からリンパ球を採血し、そのリンパ球を清潔な細胞培養室でがんを攻撃する活性化リンパ球にして、数を増やしていきます。2〜3週間後に免疫力の高いリンパ球を投与します。もう一つは、「免疫賦活療法」と言いまして、ピシバニール、クレスチンなどの薬を打って免疫力を上げようとする方法です。これらの薬は、細菌やキノコから抽出された物質ですが、それらの物質が体に入ると、人体は異物が入ってきたという情報を得て、防衛反応に入り、その一つとしてがんを退治するのです。がん細胞があれば、その人のがんに対抗するリンパ球が増えてくる可能性があるわけです。


全身投与と局所投与を使い分けて

―免疫の投与の仕方もいろいろあるということですが。

武田 「活性化リンパ球療法」では、一般的には全身に点滴の形で投与します。さらに、直接、がんの局所に体外から超音波やCT、内視鏡、血管カテーテルなどを使いながら効率的に投与します。肝臓の場合には、肝臓にチューブを入れて、胃には胃カメラを使って、腹膜炎や胸膜炎なら腹部や胸部に直接と、症状や部位に応じていろいろな方法を使います。最近免疫治療をする病院が増えてきましたが、多くの施設では活性リンパ球をつくって、漫然と全身投与をしています。医誠会では「この人は全身の方がいいか」「この人は肝臓直接の方がいいか」「チューブで入れようか」「内視鏡で入れようか」と患者さんの症状にあわせた投与をしています。免疫賦活療法でも、効果をもたらすためには何回も大量に打たなくてはいけません。ところがフィブリノーゲンという血液が凝固するときに体がつくる物質を混ぜて投与すると、投与した部分に長く留まって免疫反応が高まり、非常によく効くようになります。この免疫賦活療法でも全身投与、局所投与を使い分けています。活性化リンパ球療法と免疫賦活療法を併用して、活性化リンパ球療法でまずやっつけておいて、免疫賦活療法で維持するのが基本的治療です。

いったん出来上がってしまったがんは、手術、放射線、抗がん剤でがんを弱らせてからの免疫治療がベスト

―免疫療法は単独で治療する方がいいのですか。

武田 私達の体の中には、絶えずいろいろな刺激を受けて、がん細胞ができるのですが、免疫の機能が十分に働いていればがんは発生しないと考えられます。その意味で免疫機能を強化することはがん治療の根本です。しかし、いったん出来上がってしまったがんは、本来の免疫システムをかいくぐって大きくなっていますから、ただ免疫を上げるだけでは難しい面があります。その場合には手術や放射線、抗がん剤を使ってがんをたたいて弱らせておいて、とどめに免疫を使うことが一番いい治療になります。放射線、化学療法をしても、小さながん細胞は残っています。それを最終的に退治するのが免疫です。そういう意味で手術療法・放射線療法・化学療法は、決して対立する治療法ではなく、うまく合わせる「集学的治療」が最も良いと考えられます。ただし強力な抗がん剤を免疫療法の直前に使うと、免疫細胞も死んでしまうので、お互いの効果を損なわないで高めあう使い方が大切です。免疫治療を含むがん治療で大切なことは、患者さん一人ひとりを見て決める「オーダーメイド治療」で、医誠会ではそれをもっとも重視しています。だからこそ最先端治療をはじめとする、あらゆる効果的な治療法を研究し、必要となればそれを実施するだけの準備が必要なのです。


健康な人への予防的免疫治療も

―健康な人への免疫療法もはじめておられますが。

武田 健康な患者さんをモニターして、その免疫力が下がった時に上げる方法として、「癌予防免疫ドック」を、今年の1月から始めています。半年に1回ぐらい定期的に免疫をチェックして、低下している場合には「がんはいつ発生してもおかしくない」「がんが根づく可能性がある」と考えて、免疫賦活剤を投与し、場合によっては活性化リンパ球を投与します。健康な人に対する予防的な治療です。これをしているのは医誠会だけです。

―医誠会はいわば最先端の「がんセンター」とも言えるのですね。

武田 そうです。総合病院の中にあるからこそ、こういうことが出来ます。今度、リニアックも入りますので、放射線治療とも併用しながらできます。国立がんセンターなどを除くと「がんセンター」という名前はつけていても、免疫治療をしている病院はほとんどありません。


―ありがとうございました。

武田 力先生略歴
昭和53年大阪大学医学部卒、平成3年同第二外科助手、7年ニューヨーク、マウントサイナイメディカルセンターに留学。8年大阪大学第二外科講師。9年大阪船員保険病院外科部長、15年医誠会病院副院長・免疫化学療法センター所長。
日本外科学会、消化器外科学会、内視鏡学会など指導医。乳癌学会専門医。肝胆膵外科学会評議員。専門は、ガン免疫療法、肝臓外科、乳腺甲状腺外科。

(文 大竹奉一)
Doctor’s Attention 2/2004 掲載


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