ロボットの名は「ダビンチ」。
米国のベンチャー企業が開発し、九州大は一昨年七月に約三億五千万円で導入した。三本の腕を持ち、一本は内視鏡、残り二本が患部を切除したり、血管を縫い合わせたりする手だ。内視鏡には「二つの目」があり、体の内部の鮮明な三次元画像を映し出す。
電気メス、超音波装置、鉗子など六種類の器具が付け替えできる。
手術ロボットといっても、操作するのは外科医。内視鏡の画像を見ながら、医師が操縦装置を五ミリ動かすと、ロボットの手のは一ミリに縮小して伝わるので、どんなに器用な外科医より細かい作業が可能となる。二ミリ間隔に八針も縫え、「ベテラン外科医も脱帽の能力」と同大助教授の島田光生さんは舌を巻く。
胆石症は既に内視鏡による手術が一般的だが、この最先端技術によって確実性、安全性が向上した。
大腸がんや胃がんもこなす。さらに、現在は開腹して行う手術も、ロボットなら切らずにできるようになり、内視鏡手術の対象が格段に広がるとみられる。一昨年三月に国内で初めてダビンチを導入した慶応大学(東京都新宿区)は、ロボットにより、これまでの難しかった膵臓、肝臓がんの内視鏡手術を実施。講師の若林剛さんは「将来、メスを使って体を開く手術がなくなるかもしれない」とすら予測する。海外では欧米を中心に約百台が普及。五年前に欧州で”初執刀”して以来、細かな血管を縫い合わせる心臓バイパス手術も含め七千件以上の手術で活躍している。
ダビンチのほか、世界で活躍する内視鏡ロボットに「ゼウス」がある。
やはり米国企業が開発し、国内では東北大(仙台市)、大阪大、児島中央病院(岡山県倉敷市)など五病院に導入された。大阪市東淀川区の医誠会病院は、これまで胆石症や気胸、急性虫垂炎など四十例余の手術をゼウスでこなした。
「熟練の内視鏡医でないとできなかった十二指腸穿孔などの手術も可能になった」と外科部長の堀田隆久さんは話す。
患者の医療費負担は通常の内視鏡手術と同じ。約二億円の購入費は病院には負担だが、堀田さんは「医師も安心だし、患者サービスにもつながる」と強調する。ロボットを使えば、遠隔手術も可能になる。東北大のチームは、国内の患者に、太平洋を隔ててニューヨークから光ファイバーを経由してロボット手術する計画を進めている。
現在、臨床試験中
「ダビンチ」は外科手術の安定性や有効性を調べる臨床試験中で、厚生労働省が医療器具として承認すれば、保険適応の申請が可能になる。それまでは個人輸入で、医師の裁量で利用する形だ。
「ゼウス」については来月にも、臨床試験の申請をする予定という。 (科学部・三井 誠)
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